ナナとカオル12巻の収録エピソードと、読んだ感想です。
12巻に収録されている話
タイトル | 初出 | |
---|---|---|
第97話 | 坂の上のクレープ屋さん③ | ヤングアニマル 2013年No.10 |
第98話 | 坂の上のクレープ屋さん④ | ヤングアニマル 2013年No.12 |
第99話 | 坂の上のクレープ屋さん⑤ | ヤングアニマル 2013年No.13 |
第100話 | 失われた誇り① | ヤングアニマル 2013年No.14 |
第101話 | 失われた誇り② | ヤングアニマル 2013年No.15 |
第102話 | 失われた誇り③ | ヤングアニマル 2013年No.17 |
第103話 | 指輪と首輪 | ヤングアニマル 2013年No.18 |
第104話 | 同じじゃない理由 | ヤングアニマル 2013年No.19 |
第105話 | 首輪を作りに行こう!! | ヤングアニマル 2013年No.21 |
12巻は2013年後半に、ヤングアニマルに掲載されたお話が収録されていました。
エピソード別まとめ
ノーパンクレープ屋さん編(11巻~第99話)
会長のビデオを探す(第100話~第102話)
首輪を作ろう編(第103話~13巻に続く)
見どころ・読んだ感想
12巻は、ナナちゃんの中でカオルの存在が大きくなるクレープ編、初めてナナちゃんに使った首輪が捨てられてしまい、同タイミングで大切なDVDが捨てられてしまった矢神会長との友情エピソード、そこから続く「新しい首輪を作りに行く」という話で成り立っています。
会長のビデオを探すお話は独立したお話のように書きましたが、記念すべき第100話から始まることを考えても次の「首輪を作ろう」というエピソードのプロローグ的な位置にあると思った方がいいのかもですね。
これまで「いけすかない嫌なヤツ」という感じだった会長が、このお話を境に愛すべきキャラになっていき、最終的(ラストイヤーのエンディング的)にはカオルの味方になってくれるであろうことを匂わせているのがいい感じです。
なんで私こんな…に 居心地悪いんだろ…う?
クレープ屋さんにたどり着いたナナちゃんは白鳥女子の陸上部キャプテン、遥と出会います。
そこで「館さんとカオルが付き合っているのでは」という話を聞き、「誤解よね」と思いながらもテンパり「なんで私こんな…に 居心地悪いんだろ…う?」と自問。
この時点でナナちゃんは自分のカオルに対する気持ちというのをまだ認めることが出来ておらず・・・カオルが誰かのものになってしまうという事への嫉妬心をたびたび「居心地が悪い」と表現していました。
もし”息抜き”がバレちゃったら
そんな遥との会話の中でナナちゃんは再び「もし”息抜き”がバレて、カオルと二人の世界になったら」ということを考えます。
・・・が、先ほど踏切のところで妄想したとおりの結末ではなく、きっとカオルは自分の日常を最優先し、自分だけが悪者になって消えるのではないか?という結論にたどり着きました。
なぜそう思うのかはナナちゃん自身にもまだわからないようなのですが、これまでのカオルがしてきたことを思い返してそう確信するのです。
そういえば最初のボンデージだって、ナナちゃんの日常を守るためにカオルは文句を言いながらも壊してくれたわけですよ。
そう考えると
リョーコが置いて行った私のパンツ それを見たらカオルッ
あんな体だけど きっと!! ここに来るッ
今回も39度超の熱が出ている身体を押して、千草奈々の日常を守りに来てしまう・・・とナナちゃんは感じました。
「寝てなきゃいけないのに来るなんて、あのバカッ!」という想いと、「それでも来てほしい」という想いがナナちゃんの中で交錯していただろうと思います。
結局来ちゃうカオル
ナナちゃんの期待通り、神社に訪れたカオル。
その姿を見て、ナナちゃんの中でのカオルの存在がまた一つ大きくなったようです。
はやくカオルの元に行きたいと、ノーパンであることを忘れて走り出すナナちゃん。
結果、誰にも「ナマ」は観られずに済んだようなのですが、最終的にカオルへ顔面騎乗する形となってしまいました。
・・・カオルもうここで事切れても悔いはなかったのではないでしょうかw
※でもブラックレーベル5巻を読むと、そんなもんじゃカオルの心は満たされないようですけどね!
何…が?
その後、気を失ったカオルはナナちゃんに膝枕をしてもらっていました。
目を覚ましたカオルにナナちゃんは勇気を出して「ありがとう」と伝えます。
カオルが自分のことをいつも気にかけてくれて、こうして駆けつけてくれたことへの感謝の気持ちを言葉にしたわけですね。
でもカオルは「何…が?」と、お礼を言われる意味がわかっていない様子。
そう、カオルにとってナナちゃんの日常を守ることは当然のことであって、特別感謝されるようなことではなかったんですよね。
というかまさかナナちゃんの思考がそこまでたどり着いてるとは思ってもないだろうし。
さらにいうとカオルが欲しいのは「千草奈々」という日常を持っているナナちゃんであって、それが壊れてしまったナナちゃんではないわけですよ。
(もちろんそれが悪いということでもないだろうけど)
なので、ナナちゃんの日常を守るということは、結局は自分のためでもある・・・と。
でもそんなことを知らないナナちゃんはナナちゃんで、カオルが当たり前に自分を大切にしてくれているということを感じてしまい、ゾクゾクしてしまうのでした。
失われた誇り
クレープ編のあとでスタートする「失われた誇り」というエピソード。
内容自体は矢神会長とビデオの話なんですが・・・前述したとおり後の首輪を作るお話のプロローグ的なものなんだと思います。
机の奥に厳重に隠しておいたDVDを姉に捨てられてしまう会長。
同時にナナちゃんに初めてつけた首輪を母ちゃんに捨てられてしまうカオル。
・・・どんなものだったとしても勝手に捨てるのはダメですよね。
DVDの方は内容が内容なだけにアレですけど、首輪はいくらヨレヨレだからって・・・部屋に干してあるものを勝手に捨てる???
しかも全然悪びれない母ちゃん・・・アカンて。。。
偶然同じ境遇になり、矢神の話にシンパシーを感じたカオル。
更科先生の言葉を借りて
性癖とはその人間の人格である
ということを矢神に説きました。
二人が捨てられたものは単なるエロではなく、人格の一部なんだ、と。
なので、その失われた誇りを取り返そうと・・・友情が芽生えたのでした。(ええ話)
っていうか、矢神を奮い立たせようとカオルが言った一言
オレだってオメェのこと嫌いに決まってんだろォ!!
でもオメェにあんなに熱く語られたAV …そんなのッオレだってもう観たくなってんだよクズッ!!
これは熱すぎましたね。
カオルはプレイ中、ナナちゃんに言い訳をさせてあげるのも上手ですが・・・、こんなこと言われたら会長だって立ち上がらないわけには行かないですよ。
なんかカオルって本当に人のことをよく見てるっていうか・・・すっごい優しいんですよね。
きっとナナちゃんがずっとカオルのことを悪く言ってこなかったのって、小学生の頃からこういうヤツだった、みたいなところがあったのかもしれません。
HARUKA
矢神会長が大切にしていたビデオに出演する女優、HARUKA。
その容姿は
黒髪が長くて…ちょっとツリ目で
唇が艶っぽくて
佇まいが凛としててさ
性格はキツそうで
背は高くて肉づきよくって
胸が大きいんだ…
いやこれ、ナナちゃんやないかーーーいww
※カオルもその説明だけ聞いて「既視感が・・・」って言ってましたね。
この人、このビデオに出会ったのって11歳の時なので、ナナちゃんとは出会う前ですよ。
ってことはナナちゃんに恋したのって、HARUKAベースってこと???w
それかもっと前の初恋とかで似たような人がいて、そこから「こういうタイプが好き」みたいになっていったのかな、、、
自分のこと特別だなんて思ってんじゃねェ
その後、星野の家で対象のAV探しをすることになったカオル、矢神、そして堂本。
”大切なエロを捨てられたばっかで期待するのにも慎重になっている”矢神は、たびたび消極的な発言を口にしてしまいます。
それに怒った堂本。
AVになって流通してる段階で それを楽しんでる自分以外の人間(なかま)がいるんだよ!
なに自分しかわからない世界があるみてェなガキみてェなこと言ってんだよ
熱い・・・!熱いよ堂本・・・!
カオルの友達も基本的にいいやつなんだよなぁ。
だからこの作品好きよ・・・。
これはまぁつまり、僕らも「ナナとカオル」という作品が好きだということを「特殊な性癖」のように卑下する必要がないということなんですな。
(といってもこっちは大人気作品だったわけなんだけれどもw)
ちなみにこの時カオルたちが目的のビデオにたどり着くために語っている「DMN」「南企画」「オートヴィジョン」「C.B.」という企業の話は、そのまま「DMM」「北都」「アウトヴィジョン」「CA」が辿ったものと思われる。
諦められる程度の夢
舞台は変わってナナちゃんと友達のお話。
同級生メンバー「アイ」ちゃんの姉が、追っていた夢を簡単に捨てて結婚することになったこと、そこからアイちゃん自身も自分の夢が人生において全然重要じゃないんじゃないかという不安を抱えていることを聞いたナナちゃん。
正直 その不安は甘えだって思った
「諦められる程度の夢だったのよ」…とは私 言えなかったな
ナナちゃんにとっては「弁護士になる」という夢があり、そのために進路が違ってしまって離れ離れになってしまう人がいることは仕方のないことだという覚悟があるんですよね。
いや、そもそもその前に、人と人が離れてしまうことは自分の力ではどうこうできないという事を悟っているのか、諦めているのか・・・。
夢を追うことで疎遠になってしまう人間関係は「前進するのをためらう理由にならない」と切り捨てます。
この時はまだカオルとの「別れ」だってあることをはっきりとは意識しておらず、ぼんやりと「そういうこともあるのかな」っていう程度に考えていたのではないでしょうか。
もし強烈に別れを意識することがあったとしたら・・・それでも気丈に「夢を優先する」という選択を取れたのか・・・。
おそらくその答えのようなものは後の15巻からスタートする沖縄編でのナナちゃんを見るとわかります。
奴隷契約書
アイちゃんから姉の婚姻届けの話を聞きながらナナちゃんが想像した「奴隷契約書」。
主従関係についての内容が記された契約書にキスして口紅で捺印するというエピソード・・・実は後のラストイヤー第1巻の最初のお話に使われました。
甘詰先生的にはこの頃から「このネタ使える・・・!」って思っていたんでしょうねえ~。
そうなるとどこかで話に上がっていた「剃毛」のエピソードもそのうち見れるのかしら、、、
でも…欲しいのは もう ないやつ だから
代わりの首輪を探しにFUN LOVEを訪れたカオル。
橘さんにいろいろ勧められるも、自分が欲しい首輪は「もうないやつ」なんだと告げました。
ちょうど同じ日にFUN LOVEを訪れたナナちゃん。
橘さんと話しているうちに「同じ形の首輪」を出してもらうことができますが、実際に装着してみると「ぜんぜんちがう」ことに困惑します。
そんな二人を見て全てを察した橘さん。
二人が使っていた首輪には、カオルがナナちゃんのために手入れをしていたこと、見栄えよりも装着する人を守りたいという意志が感じられたこと、そしてそうやって込められた想いを糧に首輪そのものも育つのだということを教えてくれました。
ナナちゃんはカオルに大切にされていたのだということを再認識。
カオル・・・橘さんが味方で良かったね!
結果的に「オーダーで首輪を作りに行こう」という話に繋がってくるのです。
・・・って、裏地にフェルトが縫い付けられているとかの時点ですでに「別物」って気づきそうなものですが・・・ナナちゃんにとっては「形状」はそこまで重要視する部分じゃなかったのかもなぁ~。
小ネタ
ちなみにこのFUN LOVEを訪れる話・・・ナナちゃんはSMグッズを探すためにしれっと訪れていることを思うに、ここがそういう店だということは認識している模様。
当然2巻のバレンタインデーエピソードの時にも認識はしてましたが、4巻の開口器のエピソードでは「カオル、やっぱりこのお店でこういうの買ってるのか」となっており、今回のエピソードはそれ以降のお話なのかな?と思わせられました。
開口器のエピソードはちょっと周りの話とは浮いていて、「いつの話なのか?」がわからなかったんですが・・・この12巻の春休みよりは前と考えて良さそうですね。
・・・それにしてもナナちゃん、FUN LOVEを訪れるときはだいたい変装しているみたいだけど、、、髪型やリボンのせいでバレバレじゃないのかなぁw