ナナとカオル16巻の収録エピソードと、読んだ感想です。
16巻に収録されている話
タイトル | 初出 | |
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第133話 | 高校3年生の青い春③ | ヤングアニマル 2015年No.7 |
第134話 | 高校3年生の青い春④ | ヤングアニマル 2015年No.8 |
第135話 | 高校3年生の青い春⑤ | ヤングアニマル 2015年No.9 |
第136話 | 高校3年生の青い春⑥ | ヤングアニマル 2015年No.10 |
第137話 | 高校3年生の青い春⑦ | ヤングアニマル 2015年No.12 |
第138話 | 高校3年生の青い春⑧ | ヤングアニマル 2015年No.13 |
第139話 | 高校3年生の青い春⑨ | ヤングアニマル 2015年No.14 |
第140話 | 高校3年生の青い春⑩ | ヤングアニマル 2015年No.15 |
第141話 | 高校3年生の青い春⑪ | ヤングアニマル 2015年No.16 |
16巻は2015年中に、ヤングアニマルに掲載されたお話が収録されていました。
エピソード別まとめ
沖縄編(15巻~17巻に続く)
見どころ・読んだ感想
16巻は全編がカオルの沖縄編で構成されていました。
そう思うと沖縄編はかなりの長編ですね。
これがまた辛いんだよなぁ・・・。
この巻の最後にはナナちゃんにとってある重大な”気づき”が得られます。
またそれによって次巻行われることになる”息抜き”が、本編においては最後のプレイとなりました。
カオルと母ちゃん
普段から母ちゃんへのアタリが強いカオル。
ですが16巻ではそんなカオルの母への愛を感じるエピソードが多かったと思います。
序盤ではナナちゃんの協力もあって沖縄へ真っ先に飛んだカオル。
その直前には「ババアは死んだ」なんて悪態をついていたのがウソだったように焦っていました。
中盤では母の夢を尊重し、沖縄に残ることを決意したり。
後半の「片親ってことで小っちゃい頃からあんたには色んなこと我慢させちまってるからさ」という母に
我慢したことなんて 一度もねェよッ クソババァ
というシーンには思わず涙してしまいました。
カオルの優しさって、やっぱりこの母ちゃんと共に育んできたものだったんですよね。
・・・首輪は勝手に捨てちゃったけども!
まぁ結局母ちゃんは全然ピンピンしていたので良かったです。
口元緩んでたよ
カオルの祖父、および叔父の計らいによって、沖縄でカオルの母に店を持たせ、カオルも一緒に居住させよう・・・というのが今回の「母ちゃんが危篤」の真相でした。
そんなことにカオルを使われた母ちゃんは「勝手にカオルの未来のこと決めないで下さいっ」と反論。
だってカオルは学校があるだろ?
友達に それ…に
おそらく母ちゃんはカオルがナナちゃんのことを好きなこと、そしてナナちゃんもそれを悪く思っていないことなどをわかっていたんですよね。
今までもちょいちょい「頑張ればナナちゃんがお嫁さんに来てくれるかもしれないしね」というようなジャブを放ってくることがありましたし。
でもそこはカオルも察して
バカだな母ちゃん♪
ナナのこと言ってんの? 何とも思っちゃねーよ!仮にオレがナナのこと好きでもさ オレとナナが何とかなるとか思ってんの母ちゃんだけだぜ?
なんて強がって沖縄に住むことを決意してしまうのです。
バカッ!カオルッ!!
母ちゃんはまだ「ナナちゃんがー」なんて言ってないでしょ!!
それはもう自白しているようなものだし、未練があるってことじゃないか・・・。
「いいのかい?カオルッ 本当に…それで いいのかい?カオルは カオル…」と食い下がる母ちゃんは明らかにカオルのことを心配してくれてます。
従兄弟のアスカは「おばさん表情に出さないようにしてたけど(店を見て)口元緩んでたよ」なんて言ってましたが、内心はそんなに単純に喜んではなかったのではないかと思うのです。
母ちゃんのためだけじゃない
ただまぁ、カオルが沖縄移住を決意したのって、決して母ちゃんのためだけじゃなかったと思うんですよね。
やっぱりどこかしらナナちゃんの存在というのはひっかかっていて。
どうにか「諦められるキッカケ」が欲しかったのではないでしょうか。
勉強しても届きそうもないし、息抜きの関係を続けられたとしても辛いだけ・・・。
だったら無理矢理にでも距離を置くことができなたら、自分の中で何かが変わるかもしれないという期待はあったのでしょう。
事実、ナナちゃんに移住を告げたあとでカオルは「何かラクになっちまった…な…」と考えているとおり、諸々の葛藤から解放されることができたんだと思います。
ブラッディ凶子
沖縄の街を歩いていたカオルとアスカは偶然、点助の職人「京子」さんと出会いました。
実は京子さん、アスカの3つ上の先輩であるアイコなどとレディースチーム「病ン把瑠悔無(ヤンバルクイナ)」を結成していた過去があり、当時の異名「ブラッディ凶子」だったんだそうw
そうかぁ・・・それなのにカオルにチンチクリン扱いされて・・・大人になったんすねえ。
ちなみに京子さんが21歳でカオルがこの時17歳。
アスカはそれよりも少し下であるような描かれ方をしていたので・・・京子さんはアスカに比べたら断然先輩ということになるのかな。
(でも集会であったことがあるって言ってたので、アスカが中1、京子が高3とかそんな感じかも)
京子さんはカオルとナナちゃんの首輪作りにとことん付き合うという経験を経て、職人としてのレベルを一つあげることができたことからカオルに恩義を感じており、それを聞いたアスカがカオルを尊敬しだすことになりました。
落ち込みまくるナナちゃん
カオルが急にいなくなってしまったことであからさまに落ち込みまくるナナちゃん。
首輪を作る前のエピソード(12巻)では夢を追うことで疎遠になってしまう人間関係のことを「前進するのをためらう理由にならない」と切り捨てていたのに、実際は他の事が何も手に付かないくらいにカオルのことばかりを考えてしまうのでした。
会いたい
会いたい
会いたい
会える
きっと会える
会いたい
会いたい
会いたい
カオルに
ふと卓上にある首輪に目が行くと、鍵がないことに気が付きます。
おもむろに首輪を首につけて・・・「もし錠が もし閉まっちゃったら…」、カオルに会わなければカギを開けてもらえません。
ナナちゃんお得意の「言い訳」を自分で作って、そうしてでもカオルに会いに行きたかったわけですね。
「なっなんてね」と、おどけたところで偶然(?)鍵が「カチン」と音を立てて閉まってしまいました。
第1話のときのナナちゃんがフラッシュバックしますね~。
でも第1話の時と圧倒的に違うナナちゃんの表情。
「…あーあ♡」と、無事カオルに会いに行ける理由が出来たことに笑みがこぼれるのでありました。
フェチコン
京子さんが作った作品が使われるというSMショー「FETISH CONVENTION in 那覇」・・・通称フェチコンがその週末に沖縄で行われるということで、カオルはそこに参加していくことになります。
当初断りを入れていたカオルでしたが、元AV女優の上原アイが参加すると聞いて出演を決意。
アイさんは更科先生のお気に入りで、更科先生監修の緊縛写真集のモデルもやっており・・・カオルにとってはある種憧れの人だったのです。
そこでカオルは謎の緊縛師「K」として、海外の明るいSMショー乗りのあるフェチコンのラストにアイさんを見事に縛り上げるという芸当をやってのけました。
実はその会場にこっそり来ていたナナちゃん。
カオルが”自分以外のM”を縛っている姿をみて、「カオルの本当にやりたいこと」がこれだったのだと悟ったのか東京へとんぼ返りすることに。
似た鍵入れれば簡単に開く
東京に戻って来たナナちゃん、京子さんと一緒に点助を訪れ、鍵を開けてもらいました。
鍵はカオルが当初考えていたとおり、針金のようなもので簡単に開けることができ・・・団さんに「似た鍵入れれば簡単に開く」錠前なんだと説明されます。
団さん・・・デリカシー・・・。
ナナちゃんはどこかしら、もっと特別な錠前を期待していたのではないでしょうか。
カオルにしか開けられない、そんな二人だけの鍵を。
そしておそらくはその言葉から、Mとしての自分とアイさんを重ねてしまったのではないかと思われます。
カオルにとっては自分もアイさんも「似た鍵」でしかないのかもしれない・・・と。
その夜ナナちゃんはうまく眠ることができず、居るはずのないカオルの部屋の壁をこんこんとノックし、絶望するのでした。
よく…わかんないや…
数日ふさぎ込んでいたナナちゃん。
友達との会話にも入ることなく、どこか上の空だったのを心配され「何かあった?」聞かれるも「よく…わかんないや…」と自分の気持ちに気づけません。
河原で偶然館さんに会い、沖縄であったことを話します。
ナナちゃんはどこかで「自分がピンチになればカオルが助けてくれる」「それはきっとこれからもずっと続くこと」なんだと信じていました。
でも勝手に沖縄に行ってしまったカオル、向こうで新しいMを見つけていたカオルの存在を目の当たりにし、
カオルはカオルなんだ
私のものじゃない
ということに気づいたのです。
「カオルはカオルなんです。」
5巻で矢神姉に語っていたものと同じなのに、意味合いが全然違う言葉。
「私にとってずっとカオルでいてくれるカオル」だったはずなのに。
でもそれはカオルが自分で決めたこと。
それなら祝福すべきだし、笑顔で見送って穏やかに忘れていけるもの・・・とナナちゃんはずっとそう自分に言い聞かせていました。
・・・が、
やだっ!!やだっ!!
やだやだやだやだッ やだやだやだやだ嫌だよッ何でッ!?何で嫌なのかもわかんないよッ
と泣き出してしまいます。
読者も全員知っているんだけどね・・・ナナちゃんだけが「どうして嫌なのか?がわからない」という状況。
そんなナナちゃんを抱きかかえる館さん。
ナナは頭いいけど バカだなァ ボクは答え知ってるよ
…ナナがカオルのこと好きだから
と、ようやくナナちゃんの気持ちに気づかせてあげるのでした。
ここ、16巻の・・・いや、ナナとカオル本編の一番グッとくるシーンだ!!
何かをまとわないと一緒にいられない関係
カオルはふたたび沖縄でアイさんと会う機会があり、ナナちゃんとのことを詮索されることになります。
そこでアイさんから「キミの縄…無理してるって感じたの」と告げられ、自分がナナちゃんと一緒にいるために”息抜き”をしなければならなかったことを思い出すのでした。
アイさんは「その娘のそばにいるには…そーしなきゃいけなかったのかなァ?」と言い、続けて
…でもさ 何かをまとわないと一緒にいられない関係じゃあ …いつか
疲れ果ててしまうよね…
とカオルに伝えます。
そんなの、カオルだって考えてないわけではなく…ずっとこのままの関係が続けられるとも思っていなかったでしょう。
たとえばもし二人が結婚して子供が生まれたら?
それでも”息抜き”の関係を今と同じ熱量で続けられるのだろうか・・・?
そんなことだって考えたかもしれません。
でも、だからこそナナちゃんの横にふさわしい男にならなければならなかった。
背伸びしなければならなかったわけです。
再びショーに誘われるカオル
フェチコンは2週にわたって行われ、前回のショーが大絶賛だったカオルは再びの参加を求められました。
自分のやってきたこと、趣味、そして自分自身が認められるという喜びを実感し引き受けるカオル。
ただしショーに出るのはこれを最後にする、と決意します。
なぜならカオルにとってSMというのはそういうものではなかったから。
始まりはナナちゃんへの嫉妬、届かないナナちゃんを妄想で凌辱するためのものだったのが、そのうちナナちゃんと自分を繋ぎとめるものになって。
そのために色々工夫したり頭を使ったり、それが二人の全てになっていったわけです。
だからカオルにとってのSMというのは「ナナとカオル」そのものであって、誰かのためにするものだったり、ましてやナナちゃん以外に行う行為ではないんですね。
もっと崇高な、特別なものというか。
逆にいうと、今はこれまでの経験からある程度相手に合わせて縛ったりすることはできるかもしれない。
けれど、そこに心が入っているわけではなくて・・・どこか本気になれない部分というのも出てくるんじゃないかとも思えるんですよ。
まぁ、そもそもが「誰かにやらされるもの」ではないと思いますし・・・カオルにはこの選択肢しかなかったんじゃないかと。
好きって言っちゃえよ!
そんなカオルの告白を聞いて、まわりの人達は「好きって伝えればいいのに」という結論に達します。
おそらく、フツーの関係を築ける人であればそれでいい。
その言葉でしか伝わらないことだってあるし、それができるならそうすべきなのかもしれない。
でもカオルは
そんなもんッ!!!
この好き…が 言葉になるんだった…ら
この好き…が 言葉で伝わるんだっ…た…らオレッ!!こんな…にっ
と涙するのでした。
辛いのう。
僕ら読者はカオルの気持ちもナナちゃんの気持ちも知っているので、逆に言葉がないと伝わらない部分もあるのではないかとさえ思ってしまいますが・・・
本人にしてみたら、そんな短い言葉だけで表されるようなものではないわけで・・・(ある意味こじらせてるわけで)
だからこその”息抜き”だったり「首輪」という形だったりが必要だったんですもんね。
そこにナナちゃんからの電話がかかってきて、16巻はおしまいです。